マタニティ栄養指南 ─ 妊娠初期
2022/12/22 栄養士 張佩蓉
妊娠開始から赤ちゃんが生まれるまで、ママにとっては驚きと喜びの過程となるでしょう。この間、ママになるための期待と緊張が入り混じり、新しい生命誕生への期待感と、その一方でお腹のなかの赤ちゃんへ充分な栄養が与えられるのかという不安も出てきます。健康な赤ちゃんが生まれるには、まず健康なママであること、ママが充分な栄養を取っていれば、お腹のなかの赤ちゃんもすくすくと育ちます。ママと赤ちゃんはいつでも一緒なのです。
ということは、妊娠後にはたくさん食べるようにすれば良いのでしょうか?一人で二人分食べなくてはと、とにかく食事の量を増やせばよいと考えている方も多いようですが、むやみに食べるだけでは、胎児へ必要な栄養が行かないだけでなく、自分の「ぜい肉」も増え、さらには妊娠合併症を招きかねません。それでは泣くに泣けなくなってしまいます。ここでは、妊娠期間の食事について説明してみます。
まず、妊娠期間を4つの時期に区切って見ます。妊娠初期、妊娠中期、後期及び授乳期。そして、各期間ごとの食事のポイントを紹介し、皆さんが気軽に各時期の栄養の取り方を理解できるようにしたいと思います。全体的には、妊娠期間であれ授乳期間であれ、いずれも「バランスのとれた食事」が大切になります。母体と胎児に各種栄養を行渡らせるためには、六大栄養素が一つでも欠けてはなりません。下表は妊娠授乳期間における毎日の飲食推奨量です。ご参考にして下さい。
推奨する妊娠授乳期における毎日の食事 | |
六大栄養素 |
毎日の推奨量 |
低脂肪乳製品 |
1.5杯 |
果物類 |
(拳大で)2~4個分 |
野菜類 |
300~500グラム |
穀類根菜類 |
2~4.5碗 |
豆魚肉卵類 |
100~200グラム |
油脂、堅果類 |
小さじ3~6、堅果種子類は10グラム |
妊娠初期(1~3ヶ月)
懷妊娠初期は胚胎細胞が急速に増殖し、胎盤も発育しはじめます。そのため、妊娠初期は細胞の成長分化を助ける栄養素や食べ物をとることが推奨されます。例えばツバメの巣には、上皮成長因子や細胞分裂を促す成分があり、細胞の成長繁殖を刺激します。そのため、前期胚胎DNAの合成、細胞の生成、分化、発展等に対して良好な効果があります。また、ビタミンB6、B12、葉酸、亜鉛等の栄養素があり、身体へ適宜な補充が可能です。 体重についてはそれほど増やす必要はなく、1~2キロでよいです。この時期には、妊娠前と同じくらいの食事量でかまいません。サプリメントや必要以上の食事を取る必要はまだありません。
鍵となる栄養素で、胎児の脳力が100点満点
葉酸、ビタミンb6、b12は胎児の神経や脳の発育および造血系統に重要な役割を果たします。葉酸は細胞分裂時のdna合成に必要な栄養素であり、胎児の神経発育にとても重要な栄養素でもあります。妊娠期間中の葉酸必要量は平時の1.5倍になり、もし葉酸の摂取が足りないと、胎児の神経管障害を招く恐れがあります。またビタミンb6やb12は多くのタンパク質やアミノ酸の代謝に関わり、神経系統及び造血機能が正常に保てるようにしています。一般的に、緑黄色野菜や肉類で葉酸を摂取することができ、ビタミンb6は穀類、レバー、魚、赤身肉、卵、牛乳等から摂取でき、ビタミンb12は多くの動物性食物に存在します。そのため、ベジタリアンの妊婦は特にビタミンb12の補充に気をつける必要がありますので、ビタミンb12を含む酵母粉末や総合ビタミン剤によってb12の不足を補ったほうが良いでしょう。
成長、免疫に不可欠─亜鉛
亜鉛は人体に必須の元素です。成長発育、人体の免疫システムにとって重要であるだけでなく、体内の多くの酵素を構成する成分になります。そのため、体内における生化学反応の多くは亜鉛に頼っているのです。亜鉛は燕の巣や木の実、穀類、豆類、牡蠣、貝類、レバー等の食物から摂取できます。
妊娠期に欠乏しがちな「ヨウ素」
妊娠期は、胎児が急速に成長するため、妊婦の基礎代謝も上がり、ヨウ素が不足する状況が起こりがちになります。甚だしい場合は胎児の脳部発育にも影響するので、妊娠期間全体を通じてヨウ素を補うことが大切です。ヨード添加食塩或は昆布、海苔等のヨウ素を豊富に含むもので補充することが望まれます。
妊娠中期(4~6ヶ月)
この時期の胎児は各器官が徐々に成熟し始め、顔も形作られます。身体組織を作るタンパク質が引き続き必要となるほか、胎児の成長発育に回すため、妊婦の一日当り必要カロリーは300kcal増えることになります。そしてエネルギーの代謝に関係するビタミンB1、B2、ナイアシンの必要性も高まります。この時期は体重が5~6キロ増加することが推奨されます。ただ、急激に増加させるのではなく、毎週0.5kgのように徐々に増やしていったほうが良いです。
ビタミンB群補充で活力を
ビタミンB群は人体の複雑な代謝反応に関わり、体内に入った栄養素をエネルギーに変える手伝いをします。そのため、妊娠中期におけるカロリーやタンパク質の需要増加に伴ない、ビタミンB群の必要量も高くなります。ビタミンB群を豊富に含む食べ物は、豆類やオートミール、雑穀、堅果、赤身肉、卵の黄身、牛乳、ビール酵母等などです。
丈夫な身体はカルシウムから
真珠パウダーにはカルシウム、アミノ酸及び微量元素が含まれており、妊娠期間中に胎児の骨格成長のために母体から供給することができます。胎児の正常な骨格成長を促すためには、毎日少なくとも1,000mgのカルシウムを摂取が推奨されます。また真珠パウダーには、寝つきを良くしたり、体質の調整のほか、美容の効果もあり、妊娠中期から後期における妊婦の色素沈着を改善することができます。そのため、妊娠中期や後期に真珠パウダーを継続して服用することで、胎児だけでなく妊婦にとってもプラスになります。そのほかカルシウムを多く含む食品である牛乳やチーズ、ヨーグルト、小魚、豆腐、胡麻などを食べるようにしてもいいでしょう。食べ物だけでなく、普段から外を歩くようにし、適度に太陽光を浴びることで体内でのビタミンD合成を促進し、カルシウムを吸収しやすくなります。
色とりどりの野菜や果実で腸機能を保つ
妊婦の多くは子宮が大きくなり、腸の蠕動が下がります。そのため、妊娠中期から後期にかけて便秘に悩まされがちです。なるべく多くの根菜類や各色の野菜・果物をとるべきです。なるべく種類に変化をつけ、水を飲むようにすることで、腸の蠕動を促し、便秘とおさらばすることができます。少なくとも毎食一皿(碗)の野菜を食べることで腸機能を保つことができます。
妊娠後期(7ヶ月~出産)
妊娠後期は胎児の成長期です。胎盤が成長し、胎児の体重が大幅に増え、血液量も大きく増加します。カロリー面では中期と同じく300kcal増えます。大切なのは引き続きバランスのとれた栄養をとり、各種野菜や果物を食べ、明るい気持ちを維持しながら、赤ちゃんを迎える準備をすることです。もし緊張しがちな場合、適宜な量の真珠パウダーを飲むことで緊張が和らぐことがあります。真珠粉には気持ちを安定させる作用や、毒素の排出の作用があり、安産や、妊婦の皮膚が赤くなったり痒みが出たりする症状にも効果があります。
生物価の高い良質なタンパク質を選ぶ
タンパク質は身体組織を作る原料となり、タンパク質があれば胎児が日に日に丈夫になります。妊娠期間中、できるだけ生物価(蛋白質の栄養価を示す指標)の高いタンパク質を摂取することをお勧めします。例えば卵、牛乳、魚、肉類、及び豆乳や豆腐など大豆製品です。それも食事の半分以上を占めるほうが生物利用率も高くなります。また、ツバメの巣も素晴らしい選択です。燕の巣は50%近くタンパク質が含まれており、それから大量の生物活性タンパク分子があるので、胎児の成長を助けます。
海魚は脳の発育を助ける
妊娠後期は、胎児の神経と血管システムが発達し始めます。大量の必須脂肪酸が必要となりますが、海の魚、例えばサバやサンマ、サケ、イワシ等は、Omega-3脂肪酸─EPA、DHAを豊富に含み、胎児の脳の発育や視力の成熟を助けますまた、タンパク質の補充源としても良質ですので、ぜひ多く食べるようにしてください。
「鉄」も補充が必要
また、鉄分の補充も非常に大切です。妊娠後期は大量の血液を合成する必要があります。胎児の造血のために栄養を送る必要があり、同時に、分娩時の大量失血に備えて血液を貯めておく必要があります。そのため、この時期の需要量は平常時の3倍にもなります。妊婦の方は鉄分を多く含む食べ物、例えば赤肉、牛肉、豚レバー、アヒルの血等です。もしベジタリアンなら、ほうれん草や水前寺菜、黒キクラゲ、色の濃い野菜、黒ごま等の食べ物で鉄分を摂取し、貧血を予防できます。
赤・黄・オレンジで赤ちゃんの目を保護
赤、黄、オレンジの野菜・果物、例えばトマトや人参、カボチャ、サツマイモ等は、カロチンを豊富に含んでおり、そのうちβカロチンはビタミンAの前駆体であり、胎児後期の視覚関連の発達に関係してきます。胎児が光の強さに対応できるようになり、合わせて胎児の表皮成長や免疫システムにも作用します。
※妊娠時期の8大タブー:
1.長時間の空腹
─つわりや食欲がないからといって何も食べないのはダメです。
2.偏食
─バランスのとれた飲食、おかずに変化をもたせることで、赤ちゃんにも完全な栄養をあげられるのです。
3.『三高』食物(高脂肪、高糖分、高ナトリウム)
─例えば揚げ物、フライドチキン、フライドポテト、脂身、お菓子、キャンデー、チョコレート、ケーキ等、及び高ナトリウムの加工食品、漬け物、キャンディフルーツ等。
4.飲酒またはアルコール入りのもの
─生まれてきた赤ちゃんが胎児性アルコール症候群になったり、出生体重が不足したり、奇形、更には智力障害になる恐れもあります。
5.カフェインを含む物
─例えばコーヒー、お茶、コーラなど、新生児の体重不足や不整脈を引き起こす可能性があります。
6.辛い食べ物
─胃腸に負担がかかり、子宮収縮を刺激するので、できるだけ避けるようにしましょう。
7.人工添加物を含む食物
─胎児の負担を軽くするために、人工添加物を含むものは少なめにしたほうが良いです。